英Nothingから発売された初めてのヘッドフォン、「Headphone (1)」。KEFのサウンドとNothingのハードウェアが良い具合で、音質はもちろんのこと、操作体験が特にナイスでした。
この記事では、実際に使ってみて分かった音質の傾向、操作性、ノイキャン、おすすめのEQ設定まで紹介していきます。
Headphone (1) の付属品

箱はいつものNothingらしいデザインですが、かなり厚みがあります。なんだかプレミアム感があっていいですね。
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付属品は本体、ケース、C to Cケーブル、3.5 mmケーブル、マニュアルです。

後で詳しく紹介しますが、本モデルはBluetoothと有線接続に対応していて、有線接続はUSB-CケーブルとAUXどちらも使えます。

今回はボタン類が多いのでマニュアルは読んでおきたいところ。マニュアルもかっこいいです。
付属のケースは黒のフェルトで無難な印象です。ファスナーにNothingのロゴが印刷されています。

仕様
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| カラー | Black / White | 
| 価格 | $299(US) / £299(UK) / ¥39,800(JP) | 
| 外形寸法 | 173.85 × 78 × 189.25 mm(本体) / ケース 220 × 52 × 220 mm | 
| 重量 | 329 g(本体)/ 264 g(ケース) | 
| ドライバー | 40 mm ダイナミック、16 Ω | 
| 再生周波数帯域 | 20 Hz–40 kHz | 
| Bluetooth | 5.3 | 
| 対応コーデック | AAC / SBC / LDAC | 
| 接続端子 | USB‑C(有線デジタル/充電)/ 3.5 mm | 
| ANC | リアルタイムアダプティブANC(理論値 最大42 dB) | 
| マイク | 4‑mic ENCベース通話用+ANC用を含む合計6マイク | 
| センサー/機能 | 着脱検知、低遅延モード、空間オーディオ、Fast Pair / Swift Pair | 
| 防塵防滴 | IP52 | 
| バッテリー | 1,040 mAh(推定)、再生80 h(ANCオフ)/ 35 h(ANCオン) | 
| 急速充電 | 5分充電で最大5 h再生(ANCオフ) | 
| 充電時間 | 約120分で満充電 | 
| 付属品 | 保護ケース、USB‑C to Cケーブル、3.5 mmケーブル、ユーザーガイド等 | 
Nothing らしいデザインとビルドクオリティ

例に漏れず、本モデルも見た目のインパクトは大きいです。イヤーカップ(ハウジング)はアルミベースで、透明な部分はプラスチック製となっています。

右側イヤーカップにはローラーボタンとパドル、マイクがあります。ローラーボタンは音量調整が可能で、パドルは左右に倒すことによって曲を変えたり、早送りしたり(カスタマイズ可)できます。

右側の底面には電源スイッチ、インジケータ、USB-C、3.5 mmジャックがあります。有線接続はType-Cポートと3.5mmのどちらでも可能で、有線でマイクを使う場合はUSB-Cを使う形になります。

ヘッドバンドはヌルっと伸びるタイプ。ちなみに、写真の状態にするとハウジングの角がぶつかり合って傷ついてしまうので、保護できるものを貼ったほうが良いかもしれません。私は試していませんが、以下のような保護フィルムもあるようです。
装着感

まず、装着感はかなり良いです。締め付けは強すぎず、イヤーパッドのフィット感も良好です。
メガネをかけたまま装着することもできますが、密閉感が若干薄れたり、2時間くらい使い続けると痛みを感じました。フレームの種類やかけ方によっても変わると思いますが、メガネユーザーはちょっと注意です。
重量に関しては、決して軽くはないなという印象ですが、6時間ほど連続でつけても重さによる疲労感はあまりないです。
操作感
特にローラーを回したときの滑らかな感触と音のフィードバック、パドルの操作感が面白いです。

このヘッドホンの特に好きなところは、右側のハウジングに付いているインターフェース。左からローラー、バドルです。
ローラーは前後に回すことで音量調整、クリックで一時停止、長押しでノイキャン / 外音取り込みの操作が可能です。パドルは前後に倒すと曲送り / 戻り、倒し続けると5秒スキップなどが行えて、Podcastを聴くときに便利そう。
ローラーで音量調整をすると、ヘッドホン内でカリカリ音がフィードバックとして鳴るようになっています。

ハウジングの外側にあるボタンは、デフォルトではChannel Hop(iOSは非対応)が割り当てられていますが、音声アシスタントやEQプリセットの変更などに割り当て可能です。なお、ローラーやパドルは割り当ては変更できません。
音質
まずはEQ調整なしで、Headphone (1)の到着と同時にリリースされた藤井風の3rdアルバムの「Prema」を聴いてみました。音量は70%程度、ANC(アクティブノイズキャンセリング)オン、コーデックはAAC、オーディオソースはSpotify (Lossless) という条件です。
第一印象は音が曇っていて、ボーカルも若干埋もれている印象でした。音場は狭く分離感が少なめで、あまり良い音とは言えないなという感じ。
ただ、ボーカル系ではないピアノ系のインスト(上原ひろみのアルバムVoiceとか)は結構しっくり来ました。あとはエレクトロニクス系(Snail's House とか Madeon)も低音が心地よく聴こえて相性良さそうだなと。
悪くはないですが、中低域が重なり、左右の張り出しが控えめな点は気になります。
ちなみに、独自の空間オーディオにも対応していますが、これはいまいちでした。音質も劣化しますし、没入度もそこまでありません。

EQ調整で音質が化ける

さて、本モデルはNothing XアプリにてEQを細かく調整することができます。そこで、今回はNothingコミュニティでシェアされていたプリセット「SoundGuys」を試してみました。QRコードで簡単にインポートできました。

高度なEQ調整を使うと音量が少し下がるので、今回は音量80%ほどで試聴します。
このプリセットで音を改めて聴いてみると、低域が締まり、2–4kHzの見通しが改善され、8–10kHzの空気感が少し足された印象です。面白くない音から "結構いい音" に進化しました。
歌モノではボーカルが少し前に出てきた、というよりは楽器たちが一歩下がったような印象で、曇っていた音がだいぶクリアになりました。
前のセクションと同じ曲を聴いてみましたが、やはりインスト系の楽曲が得意な印象です。ジャズやクラシックとの相性抜群です。
特にジャズ系ではピアノのパラパラ感、パーカッションの解像感、ベースの鳴り具合が良いです。楽器それぞれのレイヤー感もあります。
EQ調整で化かすことができる、Headphone (1) はそんなヘッドホンです。
ちなみに、LHDCやLDACのハイレゾコーデックにも対応しています。Nothing Phone シリーズで試したところ、確かに解像度が上がっているように感じました。ただ、劇的な変化はないですし、デバイスのバッテリー消費も増えるので、そういう意味ではAACが一番良いバランスかもしれません。
EQプリセットは以下のNothingコミュニティからチェックできます。
ノイキャン性能と外音取り込み

ANCは低、中、高、アダプティブで切り替えができます。比較対象がないので相対的に評価できないのですが、性能はそこそこだと思います。
空調やPCファンの音はほぼ聞こえなくなりますが、電車のガタガタ音や人の話し声は普通に聞こえます。イヤーパッドが良くフィットしているので、ノイキャンはオンでもオフでも大きな差は感じられませんでした。
外音取り込みは人の声が聴こえやすいようにチューニングされているからか、とても使いやすいです。終日つけっぱなしでも生活できるくらいの実用度と言えます。
バッテリーも長持ち
バッテリー駆動時間は公称で80時間、ノイズキャンセリングをオンにすると35時間になるそうです。同価格帯のヘッドホンの中ではかなりのロングバッテリー。
充電はUSB-Cに対応していて、5分の充電で最大5時間の再生が行える急速充電にも対応しています。日常的に使う上で充電頻度が低そうですし、旅行にもかなり良さそう。
Nothing Headphone (1) の悪いところ

とは言え、気になる点はいくつかあります。例えば、アルミ製のイヤーカップが傷つきやすく、かつその傷が目立ちやすい点です。
特に、イヤーカップの角と角がぶつかり合うところは傷つきやすいので、気になる方は保護フィルムを貼るのが良さそうです。私は傷つくこと自体はあまり気になりませんが、干渉した時の金属音がやや不快に感じます。
また、高価なヘッドホンでありながら、イヤーパッドが実質交換できない点も残念です。
イヤーパッド自体は取り外し可能ですが、公式からアクセサリとして販売されていないため、事実上交換できません。劣化を遅らせたい方は、社外品のイヤーカバーを買うと良いかもしれません。
【総評】EQは必須だけど良いヘッドホンでした

強力ANCや軽さより、操作性と電池を重視するなら本機は買い。音はEQで整える前提ですが、そのプロセスも含めて良い体験になっています。
一方で、長く使いたいという方は、イヤーパッドの交換品が公式で販売されていないことに留意する必要があります。イヤーカバーを使ったり、AliExpressで交換用のパッド(純正品かは不明)が売られていたりするので、それを使うのも良いかもしれません。


 
  
  
 

